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うつ病の表れ方は人ぞれぞれ~中断せず受診を~

2020/09/09 東京ほくと

汐入診療所
所長佐藤寿和(としかず)



今は仕事などの環境変化が多い時期です。同時に気候の変化も大きくなり、体にストレスが貯まりやすい季節となります。ストレスによる心の健康への影響が懸念されます。

「憂うつである」「気分が落ち込んでいる」などと表現される症状を抑うつ気分といいます。このような抑うつの状態が2週間以上続き、生活への支障も出ている場合がうつ病です。うつ病は決して珍しい病気ではありません。生涯でうつ病に罹患する人は16人に1人、1年間に50人に1人がうつ病になると推計されています。

うつ病には大きく分けて内因性、心因性(性格環境因性)、身体因性(外因性)に分類されます。内因性はいわゆる「明らかな誘因のない」うつ病です。内因性うつ病は怠けてなったわけでは決してなく、セロトニンやノルアドレナリンと言われる脳内の神経伝達物質の働きが悪くなって発症したと推測されます。心因性は性格や環境がうつ状態に強く関係している場合に分類されます。身体因性は脳や体の病気、薬剤などの影響でうつ状態となっている場合に該当します。抑うつ状態に加え、躁(そう)状態の時期がある場合には、双極性障害(躁うつ病)と呼びます。

うつ病では憂うつ・気分が重い・気分が沈む・悲しい・不安・イライラする・集中力がない・眠れない・自分を責める・食欲がない・体がだるい・疲れやすい・現実離れした心配をする・死にたくなるなど、人によって様々な症状が出ます。うつ病患者の統計でも最初は精神科医ではなく、体の症状で内科医を受診するケースが多いと言われています。「眠れない」とかかりつけ医を受診した5人に1人は、うつ病が原因で不眠になっていると言われています。

うつ病の診断は、一般的に次の2つの質問が大切とされています。
1.「この1か月間、気分が沈んだり、憂うつな気持ちになったりすることがよくありましたか」
2.「この1か月間、物事に対して興味がわかない、あるいは心から楽しめない感じがよくありましたか」
このどちらにもあてはまらない場合は、うつ病の心配はほぼないとされています。一方で2つとも該当する場合は、うつ病の可能性が高くなります。

うつ病が軽症であれば、休養と病気への十分な理解、精神療法が大切とされています。心因性(性格環境因性)であればストレスとなっている誘因を調整することも大切です。中等度以上のうつ病や軽症でも一部のうつ病の場合には、薬物療法が検討されます。薬物療法を行う場合は、最低でも半年~1年の継続内服が必要です。良くなっても自分の判断で中断しないことが再発予防には大切となります。

以前は「うつ病の人を励ましてはいけない」と言われていましたが、うつ病の人への対応は病状や経過によりケースバイケースです。上記の2つの質問に自分や周りの人が該当する場合には、かかりつけ医や精神科・心療内科を受診してうつ病の可能性はないか相談してみましょう。

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