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診療報酬と介護報酬の改定で4月から介護保険はどう変わったの?

2018/07/11 東京ほくと

「地域包括ケアシステムの推進」の強化で影響も

 2000年から開始された介護保険は3年ごとに改正されることが法令上決まっています。今年は診療報酬及び介護報酬の同時改定の年で、「地域包括ケアシステムの推進」が強く押し出されています。

退院の促進と在宅における中重度利用者への対応
 診療報酬改定の影響で、これまで以上に病院に入院できる日数が短くなることが予想されます。これまでは入院して治療を受けていた方も在宅への訪問診療を受けつつ自宅療養することになったり、早期に退院となり、ご自宅で療養する状況となることが想定されます。医療的ニーズが高い状態や多くの介護ケアを必要とする状態で自宅療養なので、皆さんやご家族の不安もさらに大きくなることでしょう。
 皆さんが安心して在宅療養生活をおくることができるように、24時間365日の支援体制のさらなる拡充が大きな課題となります。

利用者自己負担額の割り増し3割導入
 介護保険制度が開始され15年間は、介護保険サービスの利用者自己負担は原則1割でした。2015年に、一定以上の所得のある方(概ね年金収入が280万円以上)は2割負担となり、今回の改正では、2割負担の方のうち「現役世代並みの所得のある方(年金収入等が340万円以上)」は3割負担へと変更されます。6~7月にかけて「負担割合証」が郵送で届き、適応は8月からになります。介護保険サービスを利用している方は、ご自身の負担割合証を確認され、担当ケアマネジャーに連絡をお願いします。
 3割負担となると介護度やサービス利用内容は変更なくても、毎月の介護に充てている負担は大きく膨らみます。利用の回数や内容を少なくしようと検討する方も出てくるでしょう。必要なサービス利用を手控えることは、利用者の日常生活への影響はもとより、事業者としても利用いただける回数が減ることになり、事業収益減につながります。必要なサービスを必要な方に利用していただけるよう皆さんの声を運動につなげていかなければなりません。

介護予防・日常生活支援総合事業
 2015年からの3年間で要支援1・2の方の介護保険サービスのうち訪問介護(以下、ヘルパー)と通所介護(以下、デイサービス)は、国の制度から各区の制度に順次移行され、2018年4月から「介護予防・日常生活支援総合事業(以下、総合事業)」となりました。各区の介護保険事業計画等のもとに基準が設定され運用が開始されています。幸いにも足立区、荒川区はこれまでの国の制度からの変更点が多くなかったのですが、北区は区独自の考え方が導入され大きく報酬が引き下げられました。どこに住んでいるかで受けられるサービスに違いが生じるのはおかしなことです。どこの地域にいても同じようにサービスを受けられるように声をあげていきましょう。
 その一方、制度の狭間でヘルパーサービス等に依頼できない支援内容があることは現実問題です。地域住民のたすけあい活動の拡充も課題のひとつです。医療福祉生協としてのお互い様のたすけあい活動の仕組みを検討していきます。

介護人材の不足
 今後ますます深刻化してくる少子高齢社会。働く世代の人口は減少する一方、必要と推定される介護労働者は増加の一途を辿ります。東京ほくとの事業所も介護人材不足は深刻な課題になっています。数年来東京都も様々な介護人材対策を出してきています。利用できる制度を活用しつつ人材確保に努めていますが、まだまだ不足している状況です。制度上においては、介護ロボットや外国人労働者の導入も検討が進められている現状です。介護に関心のある方をご紹介ください。

北区在住要介護1のAさんの例
 要介護1のAさんが1人暮らしをおくっていると想定します。週2回デイサービスを利用し、週2回ヘルパーを利用し入浴見守り・買い物・掃除などの介助を受けながら生活していました。介護認定更新を経て新たな認定は要支援1。担当ケアマネジャーは地域包括支援センターに変更となり、介護サービス計画の見直しがされました。
 Aさんはこれまで利用していたデイサービスではなく、自宅から少し離れた事業所を週1回利用することになりました。1回の利用時間がこれまで6~7時間であったものが2~3時間へ変更。楽しみしていた利用者同士で食べる昼食の提供もなくなりました。ヘルパー利用は週1回、入浴見守りの時間のみとなりました。その他日常生活上の支援は、地域住民のたすけあい活動で支えてもらうことになりましたが、近隣にすぐに利用できるたすけあい活動の仕組みがなかったため、Aさんは、工夫しながらなんとか買い物や掃除を行うようになりました。これまで定期的にデイサービスに外出していた機会や、ヘルパーの訪問で他者とのふれあいの機会を確保していた独居のAさんは、社会との交流の機会が極端に少なくなりました。
 北区の総合事業においてヘルパー及びデイサービスに支払われる給付額は同じことをしても国基準と比較すると60%ほどに下がります。そのため、経営的な観点から総合事業の指定を受けることができなくなっているのです。

福祉事業部長 西村祐子

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