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【医療と介護の現場】小さな蓄積がつながって支える

2017/10/18 東京ほくと

 Aさん(40代男性)は4年前に脳卒中を発症、自宅で生活しています。初めてお会いしたのは3年前。うなだれるように体を丸め、車いすに座る姿が印象的でした。声をかけると、やっと返ってくる言葉は「わからない」。今思うと、脳卒中発症後のアパシー(無気力・無感情)が強い状態であったと振り返ります。
 私はAさんの作業(人の生活を構成するすべての行為)に思いを巡らせました。自身の作業を取り戻していく手がかりがどこにあるのか…。時間ばかりが過ぎていくようにも思えました。しかし、ぽつりぽつりと紡ぐ言葉が増えていきました。とりわけきらりと目が光る瞬間は、仕事の話でした。ご自身の才能を活かし会社を経営されていたのです。後遺症により、今までと同じように仕事ができないことは、Aさんが最もよく理解しておられます。そこでパソコンを開く、文字を入力することから少しずつ一緒に始めました。
 そんなある日、いつものようにパソコンを見せていただくと、「宿題」を超え、ご自身で仕事のアイデア帳づくりを進められていました。驚く私に、「また仕事するときに使う」と話されました。
 ご家族、多事業所、多職種のあらゆる相互作用が、時には目を凝らしてようやくわかるような蓄積やつながりとなり、Aさんの作業を支えていると実感した瞬間でした。「人が楽しみ行う時、萎えた心と体に力が蘇る」ある作業療法士の先人の言葉が浮かんできます。

(十条訪問看護ステーション作業療法士・吉永幸恵)

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