【医療と介護の現場】最期を一緒に過ごすこと
2018/05/02 東京ほくと
外来通院が急に出来なくなった90歳代の男性。訪問看護期間は14日間でした。部屋の壁にはご自身の略歴が壁新聞のように張ってあり、私の父の幼少期に住んでいた同じ地域で年齢が伯父と変わらないこともあり、伯父や父の話で聞いたことをお伝えし、その地域の知らなかったことも教えていただきました。祭りが多くて楽しかったことを話していただき、笑顔が印象的でした。家族には「久しぶりに深川の話ができて嬉しかった」と語られていたようです。
亡くなる当日の午前中に訪問したときには、全身のケアが終わると「ありがとう」と言われました。退室の際には弱いながらも握手の手を握り返してくれて、私自身「これでお別れなんだな」と感じました。衰弱する前に、葬儀の相談を本人も交えて行う予定もあったとか、ご自身での最期の覚悟をされていた方だったのだと思います。娘さんたちも死の受け止めができており、家族が協力して家での最期を迎えられました。
その家からステーションに帰る道は隅田川沿いの土手の道で、自転車で走りながら、ふと考えました。「私の背中には翼があるのかも…黒?白?どちらにしてもあの世に向かう人と最期のときを過ごす役割があるんだな」と思いました。
訪問看護で「最期の時」に関わらせていただくことで、時間の制約もある中ですが、ご本人の思いに寄り添い、共に過ごせることの温かみを感じられるよう今後も活動していきたいと思います。
(訪問看護ステーションなでしこ看護師・桑原弘子)