みんなで学ぼうSDGs
良い労働環境が経済も活性化 ~鍵を握るディーセントワーク~
東京ほくとは、今年度からSDGsのとりくみを事業所と地域で進めていく方針を打ち出しています。毎号1項目ずつSDGsの17のゴールについて学び、自分たちができることを共に考えていきましょう。
SDGsの8番目の目標である「働きがいも経済成長も」、その条文には「すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセントワークを推進する」とあります。
ディーセントワークとは「権利が保護され、十分な収入を生み、適切な社会保護が供与された生産的仕事」という意味で、1999年のILO総会で初めて用いられた言葉です。日本では2019年4月に働き方改革法案が施行され、「働きがいのある人間らしい仕事」と定義されたディーセントワークにとりくむ企業が増えています。
「働きがいのある人間らしい仕事」とはどのようなものなのでしょうか。生活できる十分な収入や、労働三権などの働く上での権利が保障されていること、雇用保険などのセーフティネットが確保され、自己の鍛錬もできること。公平な扱い、男女平等な扱いを受けること…。
これらは働く場があることが前提ですが、病気や障がい、育児や介護で退職せざるを得ない方や、最近ではコロナ禍での失業など、様々な事情で就労の機会を得ることが困難な人々もいます。働きたくても働く場がない人々への就労機会の創出も大きな課題だと感じます。
私が所属しているNPO法人ワーカーズコープは、人々が自ら出資して事業を立ち上げ、共に働き民主的に経営にも携わる「協同労働の協同組合」です。必要な仕事をみんなで担い、やってみたいこと、改善が必要なことなど立場に関係なくみんなで話し合って決め、一人一票で経営に参加します。また、組合員だけが地域づくりに踏み出すのではなく、地域に暮らす困難を抱えた人々と共に、人と地域に必要な仕事をおこし、働くことを通して安心して暮らせる地域づくりをめざしています。
2020年12月、臨時国会にて「労働者協同組合法」が成立しました。同法は労働者協同組合の目的として「多様な就労の機会」の創出と「地域における多様な需要に応じた事業」の実施を規定しています。
さらにこれら2つの目的の実現を通じて「持続可能で活力ある地域社会の実現に資すること」を労働者協同組合の最終的な目的として明記しています。SDGsの理念が明文化された法律であり、協同組合によるSDGsの取り組みに画期的な意義を持つものと言えるでしょう。
ディーセントワークは、SDGs達成の鍵を握ると言われています。誰もが安心して仕事を続けることができれば、おのずと経済成長ももたらされ、社会が抱える様々な問題解決にも繋がります。働くという私たちにとても身近なことが、世界を変えることに繋がるとすれば、日々の労働も尊いものに感じるのではないでしょうか。
NPO法人ワーカーズコープ
東京東部事業本部荒川エリアマネージャー
尾久ふれあい館
館長 宇津呂香織