コロナに負けるな!
王子生協病院でのコロナ陽性患者受け入れの経緯
困難が多い中、当院で新型コロナ陽性患者を受け入れ可能であった理由に、感染症を普段から診療する医師が多く、元気な若手医師・看護師が多いこと、感染制御の中心となるⅠCD(感染コントロールドクター)、ICN(感染コントロールナース)がいたこと、医師やICD、ICN、様々な職種の感染リンクスタッフ(感染対策の実践を推し進める役割を担う)が中心となり、看護師やスタッフに正しい知識・対策を繰り返し伝えていたことが挙げられます。また、病院職員一人一人の協力、地域の組合員さんたちの力も大きく影響しました。
海外から近隣へ迫る 新型ウィルスの猛威
1月に中国で感染が爆発的に広がっていた頃、日本でも感染が広がることが予想でき、医局ではこの未知のウイルスについてよく話題にあがり、自然に情報共有をしていました。2月にクルーズ船で集団感染が発生。新型インフルエンザ時には当院では3床届け出を行っていたため、都より受け入れ可能か相談がありました。
日本で広がることが予想され、「感染対応に慣れないまま緊急入院で対応するよりも、予定入院で無症候~軽症の患者から感染対応を学んでいくのがよい」と判断し、「受け入れ可能」としました。実際、この時に入院はありませんでしたが、受け入れ準備の中で、当院のような一般病院にも陽性患者が入院を受け入れるしかない日が来ると、現場のスタッフも危機感を感じていました。
3月の感染初期では、周囲の荒川区、足立区などは入院医療機関がなく、近隣の大学病院も受け入れしていない状況でした。この周辺で患者がたらい回しになる危機感がありました。
地域の患者は地域の病院で守る責任があり、近隣の状況も含め、病棟師長や看護師には入院を受け入れる必要性、協力を繰り返し伝えました。師長は「受け入れるしかないですよね」と不安を含みながらも、理解してくれました。
患者さんの受け入れ体制を盤石に
受け入れるための準備として、知識や対策についてみんなで学ぶ機会をつくり、病棟職員でPPE(個人防護具)の着脱の動画を視聴しました。また、看護体制上、夜間の入院受け入れが難しいため、日勤帯のみの方針としました。そして、誤嚥性肺炎など疑わない患者を「疑い症例」として感染対応し、まず慣れることから始めました。何人かの疑い患者で感染防護の方法を学んだところで、陽性患者の受け入れを開始しました。
入院担当する医師は、防護具が不足していた時期は最小限とし、ICDは患者担当から外し、感染対策に集中してもらって様々な提案を受けました。リンクスタッフの若手看護師は、PPEの着脱の順番について大きな文字と絵で描写し、病室のドアの前と病室内に張り出して誰でもわかりやすくしました。若手医師・研修医が感染症に対する急変対応のマニュアル作成やエアロゾルボックスを自前で工作するなど、ここには書ききれないほど様々なスタッフの提案・協力がありました。王子生協病院で働いていることがとても誇らしく思いました。
地域の励ましで困難 乗り越えコロナ対応
地域の組合員さんたちの協力も大きかったです。感染防止のため組合員さんが集まることができない状況でしたが、ごみ袋で作る「袖なし・袖ありエプロン」、クリアファイル等で作る「フェイスシールド」など、215人の方々が計3.2万を超える感染対策医材を作成して届けてくださいました(7月18日現在)。感染予防の医材が不足する中、本当に励まされました。現在もエプロンを中心に使用させてもらっています。
まだまだ困難はありますが、職員や地域の皆さんに支えられながら、一つずつ乗り越えていければと思います。
王子生協病院急性期病棟 医長 神田(こうだ) 美穂