医療と介護の現場 精神疾患の適切な治療を援助したい
2017/04/12 東京ほくと
昨年11月から、区の保健師からの依頼で、統合失調症の、40歳代の女性Aさんの訪問看護を開始しました。Aさんは、高齢の父親と兄、精神疾患を持つ弟との4人暮らしです。男性ばかりの家族の中、老朽化した家で本人の部屋も居場所もなく、窓もなく全く陽が当たらない6畳の居間に、常時布団が1枚敷かれ、そこが本人の生活の場全てです。
父親が受診には同行していますが、本人の疾患を理解しておらず、日常的に大声で怒鳴りつけ、時には手が出ることもあります。食事は、レトルトやカップ麺、出来合いのものですませています。掃除、洗濯、入浴もままなりません。父と本人と弟の年金と、兄からの生活費を合わせ月約50万円弱を父親が管理しています。
2月に自ら訪問看護師に助けを求める連絡があり訪問すると、大泣きしながら室内徘徊、不穏状態でした。本人に入院を勧めると承諾しましたが、入院費が20万円前後かかるため父は「お金がない」の一点張りで、入院に承諾しませんでした。内服増薬と訪問看護の回数を増やし、内服がきちんとできるよう、本人の話を聞き気持ちが楽になるよう援助しています。
治療できる十分な経済力がありながら、精神疾患というなかなか理解されにくい疾患のため、適切な治療を受けられないAさん。訪問看護師として関わり、どうにか本人の苦痛を軽減したいと、スタッフで悩み相談し、力を合わせ援助に取り組んでいます。
(訪問看護ステーションなでしこ所長・村田紫(ゆかり))