医療と介護の現場~自宅で看取るということ~
2020/01/22 東京ほくと
脳梗塞で寝たきり生活を続ける90代女性のAさん。訪問の際には常に感謝の言葉をかけてくれました。一緒に住む息子さんは深夜に仕事をしながらも、食事、排泄と献身的に介護をされていました。Aさんは徐々に食事の量が低下し、永眠されました。息子さんは「もっとできることがあったんじゃないか…」と涙ながらに語っていました。
Bさんは認知症で寝たきりの90代女性。娘さんの介護を受けながら何年も安定して過ごされていました。娘さんのきめ細やかな介護と看護があり、何とか必要な食事量を保っていました。
ある時、Bさんは誤嚥から肺炎を起こしました。「少しでも長生きしてほしい」という娘さんの想いに応えるように少しずつ栄養ゼリーを食べていましたが、痩せて体力も落ちていき、静かに永眠されました。娘さんからは「やるだけのことはやった」と満足の言葉が聞かれました。
私たちは、患者さんが亡くなった後、ご家族に会いに行ってお話を伺う「グリーフケア」で故人を悼み、ご家族が抱く様々な想いを聴かせていただきます。晴れやかな表情で語られるたび、後悔の言葉を聴くたび、自分たちの関わりがどうだったのかと考えさせられます。
答えのない問いに悩みながら、患者さんの笑顔や笑い声、ご家族の不安や苦悩の日々に寄り添ったあの瞬間を思い出します。そのひとつひとつを積み重ねてこれからも看護を続けていこうと思います。
王子訪問看護ステーション・佐藤利枝