病気の話 お口の健康
生協王子歯科
所長 前田 茂
生協王子歯科は2007年6月1日に開設し、今年で開設10周年となりました。この10年間、ご指導、ご支持いただいた生協組合員の皆様、地域の皆様に感謝申し上げます。今回は、身体全体の健康と密接に関連しているお口の健康についてのお話です。
歯のはたらき
歯のはたらきは、①物を咬む=食べ物を前歯で噛み切り奥歯で擦り潰し唾液と混ぜ合わせ、消化吸収しやすくします。②発音を正しくする=上の前歯が抜けていると「さしすせそ」の発音が、奥歯が抜けていると「はひふへほ」、「らりるれろ」の発音が聞き取りにくくなります。③顔貌を整える=上下の歯が正しく噛み合いきれいに並んでいることが、顔貌を整えます。
病気予防
「認知症・寝たきり・がん」を防ぐには、①咬むことで大脳の神経細胞を刺激し、ポンプ作用で脳へ血液が送り込まれ、認知症予防に役立ちます。②タンパク質や脂肪が欠如した塩分の多い食事は寝たきりの主要な原因である脳卒中が起こりやすくなるので、バランスのよい食事をしましょう。③唾液が発がん物質の毒性を弱めます。④野菜の繊維成分が発がん物質を吸収します。
8020運動
以前は「歯の衛生週間」という名称であった「歯と口の健康週間」は1958年に始まり、今年度は、6月4日~10日です。スローガンは「『おいしい』と『元気』を支える丈夫な歯」で、重点目標は、「生きる力を支える歯科口腔保健の増進~生涯を通じた8020運動の新たな展開~」です。
厚生労働省と日本歯科医師会が1989年から展開している「8020運動」は、80歳で20本以上の歯を保ち、何でも食べられることを推進してきました。当初、数%であった達成者が、現在では40%を超えるほどになっています。
健康長寿をサポート
日本歯科医師会は、この運動をさらに発展させた「オーラルフレイル」という考え方で健康長寿をサポートしています。「オーラルフレイル」は、お口の機能のわずかな低下や食の偏りなどの高齢に伴う身体の衰え(フレイル)の一つで、滑舌低下、食べこぼし、わずかなむせ、噛めない食品が増える、口の乾燥等些細な症状であり、見逃しやすく、気が付きにくい特徴があるため注意が必要です。
高齢期における人との繋がりや生活の広がり、共食といった「社会性」を維持することは、様々な健康分野に関与し、歯やお口の機能の健康も含まれています。歯周病やむし歯などで歯を失った際には適切な処置を受け、定期的に歯や口の健康状態をかかりつけの歯科医師に診てもらうことが重要です。地域で開催される介護予防事業などのお口の機能向上のための教室やセミナーなどを活用することも効果的です。