2人の思い出を大事に守る
2018/10/10 東京ほくと
今まで沢山の方と出会い、住み慣れた自宅で、生活を続けたいという意向に沿ってお手伝いしています。その中でも、自宅で二人で過ごしたいと強く希望されていた方がいます。
ご主人87歳、奥様88歳、子どもなし、二人で仲良く助け合いながら生活されていた方です。ご主人が脳梗塞発症後、私が出会った頃にはベッドで寝たきりでした。奥様は認知症状があり、すぐに話していたことを忘れてしまいます。ご主人はベッド上でありながら、奥様へ指示を出し、奥様が動くという状態でした。お二人とも介護保険を利用し、ヘルパーや看護師の支援を受け生活していました。昔から二人で夕方から晩酌をすることが好きでした。
そのうちご主人は食事や水分でむせ込んでしまい、誤嚥性肺炎を繰り返すと、ますます動けなくなりました。ヘルパーの訪問回数も増え、看護師が毎日点滴する事や医師の訪問頻度も多くなっていきました。自宅で点滴や吸引をされているご主人をみて、奥様は「かわいそう」と、口元にお酒を運んだり、海苔巻きを運ぶこともありました。
ご主人も奥様も、お互いに離れたくないと、入院を拒み、他者の支援を受けて頑張っていましたが、ご主人の呼吸苦が増悪し、入院加療となりました。その後、ご主人は病院で亡くなりましたが、現在も奥様は、二人で過ごした家を守りたいと、自宅で過ごすことを希望し、ヘルパー、看護師、デイサービスの支援を受け生活を続けています。
(地域ケアセンターわかばケアマネジャー・伊藤 律)